4.( 裏金が重大 ? ) [警察の組織犯罪]
冷静、公正に考えれば稲葉事件のほうがはるかに深刻な問題だと皆が思っている筈。そう考えた私の見方は偏っているのか。
嫌がらせや脅迫のなかでおそらく命がけで取材、追及したであろう当の曽我部氏は、「北海道警察の冷たい夏」出版後2カ月ほどのタイミングで発覚した裏金問題についてどう思っていたのだろうか?
事件の数年後の著書の中で、私の数年来の疑問に答えてくれる一節を見つけた。
『その間にテレビ朝日の「ザ・スクープスペシャル」によって明らかにされた道警の不正経理問題もあった。野心の上に正義をかざした人たちが鬼の首でも取ったかのように喜んでいる姿を横目で見ながら、私は「稲葉事件」のその後を追いかけていた。』
曽我部司「白の真実」
大手メディアのお抱えのような評論家、一見権力側の批判を展開しているようにみえるのだがどこか白々しい有名ジャーナリスト達。「裏金問題」でなぜか活況を呈した当時のマスコミの様子を、冷静な口調ではあるが痛烈に皮肉っている。道警の二つの不祥事問題でジャーナリストたちが取るべき本当の「鬼の首」は、「稲葉事件の背後に広がる闇」の解明ではなかったのか。警察権力の鬼のような一面を暴き検証し告発することではなかったのか。
暴露本の出版による警察組織への影響の大きさを考え、あえて「裏金問題」を発覚させ国民の関心をそちらに向けさせたのではないのか。
著者もあのタイミングでの「裏金問題」の発覚に対しては違和感を感じていたように私には読める。
警察とマスコミの関係を示す話として、曽我部氏はこういうことも書いている。
『ある道警記者クラブに席を持つ記者が私にぽつりと話した。「この事件を突っ込んで取材すると、他社を抜く小ネタを拾えなくなるから・・・・・」』
正直に告白する記者がいることはまだ救われる思いがする。普通マスコミはこのような裏事情については正直に伝えないことが多い。
フリーである著者は当然取材に制約を受けるだろうが、警察記者クラブ所属の記者はまるで「無言の恫喝」をうけているようだ。警察側の意に反する取材は踏み込んでできない雰囲気になっているようである。しかしこれはマスコミ各社どこも同じで警察担当の記者が警察に餌付けされ子飼いのようになっているのは必然的で限界でもある。
「談合ジャーナリズム」の記者達に真相の究明を求める方がまちがいなのだろう。
彼等は警察の「大本営発表」をほとんどそのまま記事にするしかないようだ。
刑事警察でこの状況である。秘密警察である公安に関した事ならばいったいどういうことになるのだろうか。心配ご無用、公安警察にとって都合の悪いことなど初めから存在しないことになっているので報道の際に問題になることなどひとつもないのです。秘密警察の予算の本当の執行状況や捜査活動の実態がすべて非公開とはこういうことなのである。
公安警察においては、仮に稲葉事件を凌駕する事件が内部で起こっていても表面化することは絶対にないので最初から隠蔽工作など必要ないのである。本物の「内部告発」があれば別だが。いままでも告発じみたことはあったが「公安警察の体制」に全く影響のないことばかりである。
刑事警察には一応「メディア」や「マスコミ」の「監視カメラ」がついている。機能していない事もあるが。しかし公安警察という権力機関には最初から「監視カメラ」がつけられていないので告発のきっかけすらない。つまりやりたい放題の野放し状態にあるということである。
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